ブンブク茶の間

「付き合う前」の、あの感覚が、最高に楽しい。

商社勤務の大政絢似(1)~1度目のデート~

「何か面白いことないかなぁ」と、なんとなく
鬱々としてしまう時がある。

 

 

会社に行って、仕事をして、帰って、TVを見て、ご飯を食べて、寝る。

 

楽しみにしていたドラマの放送日であれば、
今日は頑張れる!という気持ちが少しでも出てくるかもしれない。
しかし、そういう日はそんなに多くない。
そもそも、そんなにドラマは見ない。

毎日の平均的な生活の中に

「自分を変えてくれる何か」を探し続けてしまう。

 

*

突然だが、


先日、ナンパをした。
その日僕は、興行収入が164億円を超え、日本の歴代興行収入9位となった
君の名は。」を一人で観に行ったのであった。
見終わった後に「あぁ、とんでもないものを観てしまったな。」と。
そう感じた。


それは、僕の中の「何かを変える」というような
明確な変化をもたらすものではなかったし、
その映画を観たからといって「恋」に触発されたという訳でもない。

それでも、ぼくは思った。

「そうだ。ナンパしよう。」ぼくの中の何かが、スパークルした瞬間だった。

 

映画を観ていない人のために言うが、
この映画は決して、ナンパ映画ではない。

社会人1年目の頃
ナンパ師の先輩にボックスティッシュを1箱渡され、


「お前これ(武器)やるから、4人ナンパしてこい。」と告げられた。

 

夜の新宿のど真ん中に放り出されたのだ。
当時、素直でうぶだったぼくは、
「これは仕事だ。営業としての実力を試されている。」という
解釈をし、無我夢中で(ティッシュ1枚ずつ配りながら)ナンパをした。

ティッシュは入りませんか?」

「飲み会に向けて、1枚いかがですか?」

「どうぞ!ぼくを助けるつもりで!」

 

そんな事を続けていると、4人組の寄った女性が現れて

「何やってるんですか?ボックスティッシュ配りとかウケるw」と、
酔ったボス的な女性がぼくを嘲笑した。

ぼくは

「あそこに3人のサラリーマンいるでしょ?実はあれ、ぼくの先輩で、
 いま、ナンパさせられてるんだよね。ぼくを助けると思って、
 ちょっと呑みに行きませんか?代金は全て、あそこにいる、あの、
 一番背の高いサラリーマンが払いますから。」

と、ティッシュではなく先輩の財布を売って声をかけた。

 

結果、この4人女の子を誘うことに成功したのだ。

そんな事がきっかけで、実力を認められた僕は
それからしばらく、ナンパ師の先輩に手ほどきを受けた。
正直、ノウハウなどはなく、今のようなシチュエーションに救われるような
数撃ちゃ当たるの人だったので、
技術的に得るものは無かった。しかし彼は、ぼくにこう言った

「俺たちがやっている事は、ナンパじゃない。価値の提供だ。お前という人間には価値がある。でも残念ながらイケメンではない。イケメンはそれだけで価値がある。じゃあお前の価値はなんだ?コミュニケーションすることでしか、それを伝えられないだろ?
 だったら、こうやって街で声をかけることは、ナンパなんて安いものじゃなくて、お前という価値を提供するための手段でしかない。断られても、怖くないんだ。それは、お前が否定された訳じゃない。価値を伝えきれなかっただけだ。価値さえ伝われば、話を聞いてくれる女性はいる。自信を持て。ってか、タバコ持ってねぇ?え、お前吸わないの?悪いんだけど買ってきて。」

 

僕は言った。

「いやです。(話なげぇーな)」


しかし、話を長いと感じながらも
「ナンパをする」ということに対する後ろめたさがなくなったのは覚えている。

話は戻る。

名作映画を観たあと、僕は「気が向いたらナンパしよう」くらいの気持ちで
東京の繁華街を歩いた。ちょうど台風の予報があり、天気も悪く、小雨が降っていた。

僕はBEAMSで買ったお気に入りの傘をさし、
映画館を出て、駅と逆方向に歩いた。
セレクトショップが立ち並ぶ、オシャレゾーンに向かおうと思ったのだ。

その日は土曜日で、午前11時の街には、多くの若者があふれかえっていた。
※朝イチで映画を観たのである。

途中、交差点で信号待ちをしていると、
勢力を増しつつある小雨が降る中、
傘をさしていない女性がいた。

「台風が急接近しているにも関わらず、傘をさしてないとか頭おかしいな。」
と思ったが、シルエットがキレイだったので、近づいてみた。

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※イメージです。


死ぬほどタイプだった。

僕は、ノータイムで声をかけた。
BEAMSの若干カラフルな傘をさしだし


僕「お姉さん、何やってるんですか?天気予報見てこなかったんですか?」

女「えっ、あっ、すいません。雨ですよね。なんとかなると思って。」

僕「いや、もうなんとかなる許容値を超えてると思うんですけど、
  これ、許容範囲なんですか?」

女「いや、ちょっとまずいなぁって感じですよね。降ってきちゃった。」

僕「近くのコンビニまで、行きます?このまま送りますよ。
  それかこの、某高級セレクトショップBEAMSの傘でよければ、あげますよ。」

女「いや、それは悪いですよ…。」

僕「じゃあ、このBEAMSの傘今もらうのと、
  ちょっとカフェとかで雨宿りしてから、BEAMSの傘もらうのだったら、
  どっちが良いですか?」

女「結局BEAMSの傘はくれるんですね(笑)
  いいですよ。ちょっとだけなら。」

この間、僕は緊張してかなり早口だったが、
一緒にカフェに行くことに成功した。かなりまさかであるが、
勢いって素晴らしい。

速攻で「NAVERまとめ」を開き、一番上に出てきたお店をタップ。
※女の子の気が変わらないうちに、お店に行く必要がある!

幸い、その交差点からは歩いて5分ほどだったので、
お店にはすぐ着いた。結構洒落たカフェである。

3時間話した。

話のほとんどは、お互いの仕事の話だった。
もちろん、パーソナルな話もかなりしたのだが、
なんとこの子、話せば話すほどハイスペックな子であった。

・商社勤務

・マンションを持っている

・帰国子女

あまり詳しく書くと、下手したら本人を特定できるのではないかというくらい
ハイスペックだった。

僕はぼくで、最近転職をした話と、
彼女が働く業界については、比較的明るかったので
対等に話すことができて、かなり充実していた。

正直、ナンパをした子とご飯は、
実は過去にも何回かある。が、その殆どは
当たり障りの無い会話ばかりで、あまり面白いと思ったことが無かった。

しかし、この時ばかりは違った。
異様に楽しいのである。

彼女は僕に
「今日は何してたんですか?」と聞いた。

一瞬「君の名は」を観たこと、
この映画がどれほど素晴らしい映画であるかということ、
公開翌日の午前中の第1上映を予約してみたこと、
全てを話してしまいそうになった。

が、僕は冷静に
「家だと仕事がはかどらないんで、スタバで仕事してたんです。
 朝が一番はかどるから。」
これ以上ないくらい出来る男ぶって、そう答えた。
実際、膨れ上がったカバンにはPCも資料もごっそり入っていて、
信憑性があった。

「あっ、そうだったんですね。じゃあ今もコーヒー飲まれてるし、
 コーヒー飲み過ぎちゃいましたね。ふふ(笑)」

 

天使かよ。

 

とにかく、彼女は特に面白くない話でもよく笑っていた。
僕の話をたくさん聞こうとするし、
おしゃべり好きなのか彼女自身のことも、たくさん話してくれた。


その後、LINEを交換し、初めて会ったということもあり
雨の止んだ15時頃、解散となった。

僕は別れ際に
「次は、ちゃんとデートに誘ってしまうと思います。」と言った。

すると彼女は。
「いい人で良かったです。また是非。」

 

天使かよ。


ナンパから始まった話だが、
僕はこの日、平均的な毎日から
「何か面白いこと」が始まるんだ。と実感したのだ。