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ブンブク茶の間

SFと恋愛が大好物。恋愛はSFだ。

クリスマス・イブに会った女性の話2

彼女は、ひどく酔っ払っていた。
初対面であるにも関わらず、お構いなしに管を巻いた。

彼女は、ぼくより少しだけ背が低く。
バーの背の高い椅子に腰掛けるには、居心地が悪いようだった。

彼女は、
彼女は、かわいかった。

 

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彼女の名前は、"まゆみ"というそうだ。
芸能人でいうと、ちょっと持田香織に似てる。

前回の話はこちら↓

tutti2501.hatenablog.com



「君さ、こんな日に映画なんてひとりで観て、何考えてんの?」

 

「何考えてるんでしょうね。いやでも、一人で映画とか観に行きますよね?」

 

「行くよ。私だって一人でも行くよ!でも、イブの前日には絶対に行かない!」

 

「もうあんまり関係ないですよねイブとか。男は特に。まゆみさんって、いくつなんですか?」

 

「まず自分から言いなよ!でも、見るからに私より年下だよね。
 私、年下には本当に興味ないんだよね。」

「出た。そういう人、ぼく何人もそういう人見てきたけど、
 そういう人に限って、年下と付き合ったことないんですよね。
 ぼくは26です。」

 

「へー。26か。まぁ確かに年下と付き合ったことないけど、
 もともとやっぱり興味ないからな。私はねー。『いくつに見える?』とか言う
 女が嫌いな29歳です。」

 

「29歳ですか?なんか、今年(2016年)めっちゃ29歳と縁があるんすよね。
 ちなみに、血液型なんですか?」

 

「29歳に縁あるってなにさ。血液型はABだよ。何型?」

 

「うわ。AB型ですか。実はぼく、
 いままでAB型の人としか付き合ったことないんです。
 ちなみにぼくはB型です。」

 

「AB型としか付き合ったことないって、絶対うそじゃん。」


「はい。AB型とだけは付き合ったことないです。」


「なにさそれ、変人とか思ってるんだろー?」


「イブの夜に一人でバーで飲んでる時点で、結構ぶっとんでますよ。」


…ぶっとんでいる。
 

そう、彼女。まゆみさんはぶっ飛んでいた。


このなごやかな会話の前。
つまり、彼女がバーに来る前、
何をしていたかと言うと、

 

ナンパをされた男と呑んでいたというのだ。

「20時くらいに、ナンパされてさ。
 ほら、この人(LINEを見せながら)。祐一だって。
 終電ギリギリまで呑んでたんだけど、急に『うちに来たい』とか言い出して
 そのまま追い返してきたんだよね。私ここ最寄りだし。」

「祐一さん、めっちゃゴリゴリきましたね。」

 

「そう。楽しい人だったんだけどね。あとお金も持ってそうだった。」

 

「へー。家に連れ込めばよかったのに。
 じゃあ今日ナンパされたの2回目ですか?」

 

「えっ、これもナンパなの?」

 

「いや、さすがにこれはナンパですよ。
 ぼく、そういうつもりで声かけたんですよ。」

 

「へー。失敬失敬。じゃあ、ちゃんとナンパされますね。
 はい。じゃあちゃんとナンパしてみてください。どうぞ。」

 

【ちゃんとナンパされますね。】って、
正直、なかなか出ない言葉だと思うんですけど、
ぼくはもうこの辺で「うわー。この人男の人にめっちゃ慣れてるなー。」
と思っていました。

あと、圧倒的に懐深過ぎる29歳でした。

彼女、一人でも飲み歩くような飲ん兵衛で。
仕事は、某広告代理店のクリエイターとのことだった。

仕事が大好きらしく、
無意識に3徹して、3日目で倒れて病院に行くまで、
ぶっ通しで仕事をしたことがあるらしい。
そのせいで身体を壊していた時期もあったようだが、
話の端々がぶっとんでいる。

「どんな人がタイプなんですか?」

 

ぼくは聞いた。

すると彼女は、

「ちょっと闇を抱えてる人。なんか、すっごい苦労してなくても良いんだけど
 辛い経験とかしてる人。そういう人って必然的に人生の棚卸しをしている回数が多いと思うんだよね。
 棚卸しの回数が多い人って、一緒にいると深いし楽しいと思うんだ。
 ってか、君もイブの前日に行く感じ。だいぶ闇がありそうだよね。」

 

好きなタイプを聞いて

 

【人生の棚卸しの回数が多い人】

 

って回答が、なんだかすごく刺さったのを覚えています。

 

3時頃まで飲んだ。

 

彼女は、ひどく酔っ払っていた。
初対面であるにも関わらず、お構いなしに管を巻いていた。

仕事の話。
さっきナンパされた祐一さんの話。
同棲していた彼と、9月に別れた話(!?)
たくさんの話をしてくれた。

彼女は、ぼくより少しだけ背が低く。
バーの背の高い椅子に腰掛けるには、居心地が悪いようだった。

彼女は、
彼女は、かわいかった。

 

「まゆみさん、なんかめっちゃぼくに男の話するじゃないですか。
 もうちょっと目の前にいる人のこと大事にした方がいいと思いますよ。」

 

「んー。そうだね。なんか、なんでも話せちゃって困るね。
 じゃあさ。お店変えよっか。」

 

「(じゃあってなんだ?)」

 

 

お会計をする。

その際、ぼくが払おうとしたら

「年下に奢られるほど、困ってませーん。」と
言いながら、お金を出してきた。

「いや、いいですよ。ぼくが声かけたんで。」

 

「うるさいな!楽しいんだから払うよ!」

 

この、強気で粋な持田香織の図らいで、
結局お会計は半分ことなった。


店を出て歩きながら彼女は言った。

 

「ねぇ、恋愛の話しようよ。テーマを決めて。」

 

「良いですよ。で、テーマってなんですか?」

 

「君さ【K点を越えたキス】ってしたことある?」

 

「K点?」

 

「そう。K点。」

 

とんでもないものをぶっ込んできた、
持田香織似のまゆみさんは、相変わらず酔っ払っていて
少し、可愛かった。

 

続く