ブンブク茶の間

SFと恋愛が大好物。恋愛はSFだ。

ある女性と出会うまで(2)

 

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「私のどこが好き?」

 以前付き合っていた彼女から、そんな質問をされた。

 

 

「どこって…。どこっていうか、まぁ全部。」

 

「ふーん。じゃあ、なんで私を好きになったの?」

 

「え、それは、可愛かったから。」

 

「なんで可愛いと思ったの?どこが可愛かったの?

 可愛いと好きになるの?」

 

「めっちゃ聞くじゃん。好きになるのに、そんなに理由って必要なの?」

 

「好きな理由を説明された方が、愛を感じるんだよね。」

 

「そういうもんなんだ。」

 

「そういうもん。だから説明して。」

 

【なぜ好きか】これを説明できた方が、愛を感じれるらしい。
実際付き合っていたら、説明する機会なんてほぼ皆無だし、
自分も、なんで好きだったかなんて分からなくなる。

でも確かに、それでも説明できた方が良いのだ。

 

言葉にできるということは、武器なのだ。

 

***

スタバで声をかけた女性の第2話です。

※1話はこちら。↓

tutti2501.hatenablog.com

 

 スタバで声をかけ、連絡先を交換した彼女にLINEを送った。

 

「さっきは突然すいません。スタバでお会いした者です!
 つい、連絡先聞いてしまいました…。」

 
ぼくは、どうせ返ってこないだろう。
でも、返って来たらいいな。
そう思っていた。

10分ほど経って、返事が返ってきた。

 

「こんにちは。正直驚きました。」

 

…短い。
しかし、短いが、返ってきた!

 

「そうですよね。でも怪しい人間ではありません。
 ほぼ日手帳に誓って。」

 

 

www.1101.com

 

「ほぼ日に誓われたら、仕方ないですね。」

 

「突然ついでなんですけど、1回、お茶でもしませんか?」

 

…返事がない。

 

もともと、返って来ない可能性の方が高い状況だ。
ぼくは返事がないからといって、繰り返すLINEを送るような、
愚の骨頂みたいな事はしない。

と、思っていたが、人間は愚かだ。

 

「どうですか?」

 
愚の骨頂だった。

追撃弾を放ってしまった。 

 

すると、

 

「いいですよー。お茶しましょう。」

 
なんと追撃は見事に命中し、
こうして、僕らは晴れてお茶をすることになった。

 

***

 

 

渋谷で、ぼくは彼女を待っていた。
とても良く晴れており、お茶をするだけではもったいない天気だった。
渋谷は、若者でごった返し、
まだ27歳のぼくであっても「若ぇ…」と思わざるを得ないような人がひしめき合っている。
 

約束の時間になり、彼女からLINEが届いた。

 

「ハチ公口の、東急の前にいます。どこにいますか。」

 

ぼくはそのLINEを見て、
彼女がいる方向、東急の入り口に目を向けた。

 

彼女も、携帯から顔を挙げたタイミングだったようで、
同時に、目があった。こんなに人が多いのに。

 

 「こんにちは。」

 

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出展:http://trend-heaven.com

※イメージ

 

普通に綺麗だった。
写真は安達祐実だが、この写真が一番似ていると思った。

 

「こんにちは。お店予約してあるんで、行きましょうか。」

ぼくはそう返して、歩き出した。

 

彼女は、適度に足首の見えるアンクル丈のガウチョパンツと
Tシャツという服装だった。
カジュアルにも見えたが、足首が見えるその服装が
なんとなく艶やかに見え、綺麗だな。と思った。

 

渋谷から少し歩いて、人通りが少なくなった所にあるカフェに向かった。

彼女は、ぼくよりも年上だった(のように見えた)ので
渋谷のど真ん中にあるような、派手で軽快な店は似つかわしくないと感じ、
ぼくは駅から少し離れた隠れ家的なカフェを予約していた。

 

ぼくは、突然声をかけてしまったこと、更に連絡先の交換をせがんだこと、
そして、お茶に誘ってしまったことについてのお詫びとお礼を述べながら歩き、
彼女はそれに対して、社交辞令的に「いいですよ」と相槌を打ちながら歩いていた。

 

店について、彼女はワインを、ぼくはビールを頼み、
お互いのパーソナルな話をすることとなった。

 

彼女はさゆりさんと言って、
お酒が好きという話や、
35歳で外資系のコンサル会社で勤めていることなど
話してくれた。

 

コンサル会社といえば、
企業の経営戦略や利益拡大に向け、第3者の客観的な視点から問題解決を行う。
もう、なんというか、エリートだ。

もう、他に言いようがないけれど、
エリートってなんだって話しだけれど、少なくとも
ぼくの人生でこの類の人達と知り合う機会など、

 

ほぼ無い。

 

そもそも、どこに生息しているのかも分からない。

 

ましてや、新卒からいきなり僕の年収を遥かに上回る収入を得ている人種に

会いたくなんて無い。

 

まぁ、そんな感じで、

ぼくもそれに応じて、年齢や仕事の話をした。


その中で、過去付き合って人の話になった、その時にぼくは

 

「年上が好きで、年上と付き合うことが多いです。」

 

そう伝えると、彼女は

 

「なんで年上が好きなんですか?」と、ぼくに聞いた。

僕自身、なぜ年上が好きかということは、何度か考えてきたことだった。

 

「別に、年上だから…。という訳ではないんですけど、
 年上の人って、必然的に色んな経験とか知識とかしてきているし、
 その分、何かを自分ごと化して考えてきている人が多いと思うんです。
 年下でもそういう人はもちろんいるんでしょうけど。

 以前、ある人が"人生の棚卸しの回数が多い人は魅力的な人が多い"
 って言っていて、その通りだなって思って。」

 

「へー。そうなんだ。私は君より年上だけど、
 そんなに色々考えてきた、って実感は無いなぁ。
 でも、人に話せるくらい、いろいろあったなぁ!ってことくらいはあるかもね。」

 

「でも、年上の人って、年下のことあんまり好きにならないですよね。」

 

「まぁ人による…って言ったらつまんないか。
 でも、それって20代の子(女の子)に多いんじゃない?
 正直、30超えると、年下も年上も関係なくなってくるよね。

 君だって、27でしょ。私35だけど、関係ないもん。

 逆に申し訳ないくらいの年の差だよ。」

 

「いや、年上の女性を好きって男、多いと思いますよ。」

 

彼女は、過去に結婚目前までいった年下の男性がいたという。

当然といえば当然だが、付き合ってきた人とは結婚を視野に入れてきていて

具体的な話をした末に、別れてきたとのことだった。

 

彼女とのやりとりは、どこかぎこちなく
「肩の力を抜いて会話をする」とは到底言えなかったが、
それが決して、居心地が悪いということには結びつかなかった。

彼女もぼくも、時折お互いに何を聞こうか…という沈黙を混じえてはいたものの
バランスよく会話を続けていた。

彼女はワインを3杯。

ぼくもビールをジントニックに変えて、3杯目を迎えていた。

 

時間にして、3時間くらい話しただろうか。

 

ぼくの方が、後に予定を控えており、このことは事前に共有していた。

彼女から「そろそろ行きましょうか」と、デートの終わりを告げる声がかかった。

 

お会計を済ませ、

駅の方に向かった。

 

正直、彼女が綺麗で、魅力的過ぎて、ぼくも心の底から惹かれた。

ということは一切なく、せいぜい「良い人だなぁ」というレベルの感情だった。
(自分から声をかけといて、かなりの上から発言は目をつむって欲しい…)

 

しかし、若者特有の、一旦火がついて燃え上がり、
自分ではどうにも鎮火できないような恋は、その瞬間は輝かしく
他を寄せ付けないような炎を放つ。

ただ、結局はすぐに燃料が枯渇してしまって
一瞬にして灰になってしまう。

熱しやすく冷めやすい。というより、熱し続けることができないのだ。

 

そんな連続性のない恋愛感情を、ぼくはあまり信用していなかったので
この「良い人だなぁ」というただそれだけの感情は、
ぼくはなかなか信用できる感情なような気がした。

 

「いま、好きな人はいるんですか?」

 

「いませんよ。好きな人って(笑)」

 

「でも、デートとかはしますよね?」

 

「うーん。この間、3回くらいデートした人がいますね。
 映画館に行って、水族館にも行って。食事をして。」

 

「付き合わなかったんですか?3回も会って。」

 

「なんか、なんとなく違うなぁ。って思ってしまって。」

 

「まぁ、多く会ったからって分からないもんですよね。」

 

「うん。そうですね。」

 

「こんな話して、あれなんですけど
 またデートに誘ってもいいですか?」

 

「うん。良いですよ。笑」

 

「じゃあ、◯日空いてますか?」

 

「◯日ですか?ええ、空いてます。」

 

「じゃあ、また連絡しますね。◯日、宜しくお願いします。

 今日は来てくれて有難う御座いました。」

 

「いえいえ、こちらこそ、良い人で安心しました。またね。」

 

 

そう言って、渋谷駅で僕らは別れた。

 

 

別れたあと、僕は特別な感情はあまり抱かずただ本当に最後まで

「綺麗で素敵な人だったなぁ」という感想だけだったことに驚いた。

 

ただ、彼女がどんな人生を歩んできたのか、
もっと知りたい気がした。

 

その時、ぼくはまだ、お腹深い所に沈殿している
明確に言葉にできない感情が何かは、さっぱり分からなかった。