ブンブク茶の間

「付き合う前」の、あの感覚が、最高に楽しい。

どうぞ、お幸せに。

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お互いに、なんとなく理由をつけて会うようになっていた。
どちらかというとぼくの方から誘うことが多かったが、
それも若干ぼくが多い。というレベルの話で、
実際は彼女から誘われることも多かった。

 

彼氏のいるその彼女は、いつも彼とうまくいっていないという話をし、
お酒がまわってくると、その悪口には拍車がかかり、最終的には
彼の良い所を口にし始める。

ぼくは、彼女が彼をひたすら褒めちぎる様子を、いつも否定も肯定もせず
うんうんと聴いて「で、その素敵な彼と俺を比べて、どっちが好きなの?」
という嫌らしい質問をしていた。

その質問に、きまって彼女は、表情を少し柔らかくして「ふふふ」とだけ笑って
誤魔化しとも言い切れない、なんとも言えない生ぬるく人間くさい笑顔をみせた。

ぼくらの関係は、お互いが引いてしまったら
引き止めることなんてできず
かと言って、どちらかが我を忘れて恋をしてしまったら、
お互いの背景や様々なことが破綻するのが分かっている。と、そんな状況だった。

彼女がぼくを呼ぶ時は、ぼくも「ノー」と言わず。

ぼくが彼女を呼ぶ時も、彼女は「ノー」とは言わなかった。

 

 

ある時、彼女から連絡が来た。

 

「覚悟して聴いてもらえる?大事な話だから。」

 

「なに?なんとなく想像つくけど。」

 

「ずっと、考えていたんだけど、
 私、本当にあなたの事がとても大切です。
 でも、やっぱり、もう本当に会えません。これからずっと。」

 

「そういう話だろうと思った。」

 

彼女の「大事な話」は、いつか来るだろうと分かってはいるものの
想像力の欠けた頃にやってくる自然災害のようなものと、ぼくは受け止めていた。

引いたら引き止められない。その権利は、お互いにはない。

 

ぼくは、本当にこれが最後なんだな、となんとなく実感をしながらも
同時に、これが最後の連絡かもしれないと思い、

 

「分かったよ。でも、"もう会わない。"なんて、そういう大事な話は、
 会ってしてもらわないと困るな。」

 

お互いに引き止められない。だからぼくも引き止めなかったが
同時にお互いに「ノー」とも言えなかった。それは、ぼくらの中では
ひとつの約束事かのように「ノー」と言ってこなかった。

 

結局、彼女とは「もう会わない。」という話し合いをすべく。

もう一度、会うことになった。

 

「最後は、思い出に残らない場所で会いたい。でも、お腹空いたから
 ご飯は食べたい。」

 

と彼女が言うので、なんの変哲もない定食屋さんでランチをした。
ぼくはほっけ焼き定食を。彼女はさば味噌定食を頼んだ。

もう2度と会わない。とは到底思えない様子だった。

定食屋を出て、どこで話し合うかを話し合った。

 

話し合いの最中、彼女が急に泣き始めた。

とても深刻そうに泣く彼女を見て、ぼくは驚くほど冷静になり、

いや、冷静さを一周回って、逆に頭が火照ってしまったのかもしれない。

 

 

「2人になれる所に行こうか。」と言った。

 

 

彼女は、泣きながら笑って

「ホントにバカだよね。お互い。」

と言った。

 

あからさまに装飾されたベッドの上で、
横にいる彼女に「もう会わないにしては、最低な最後だね。」と言った。

 

ぼくは彼女を確かに好きだったけれど、
もうこんなのはいいやと、心から思った。