ブンブク茶の間

「付き合う前」の、あの感覚が、最高に楽しい。

あるデザイナーとの話(4)

f:id:tutti1990:20171017230823p:plain

あの時、新宿にある少し豪華なラブホテルを出た時、
ぼくはどんな顔をしていたのだろう。

 

tutti2501.hatenablog.com

tutti2501.hatenablog.com

tutti2501.hatenablog.com

 

 ぼくが彼女を誘った瞬間、彼女は

「うわ。最低。予想してたけど、最低。最低!最低!!誘い方とか!最低!!」
と一息で「最低」という言葉を5回も発した。

 

ぼくのこの時の胸中はまさに「カマトトぶりやがって!」だ。

英語で言うと、

Kamatoto-buri ya gatte!! 

だ。

 

「いや、あのさ。別に変な意味じゃなくてさ。」ぼくはしどろもどりになりつつも「一緒に旅行をするということは、当然そういったことも頭をよぎる訳で。その流れでホテルの話をしただけなんだけど。あと、今誘うのも男性としてマナーかなって思って。」と言った。

 

彼女は
「いや、えっとまぁ、分からなくないけど。え?ん。どうする?」
と答えた。

 

「なんか今日凄い楽しいからさ、まだ一緒にいたいんだよね。でも、お腹もいっぱいだし、お酒も飲んだし、かといってカラオケって感じでもないでしょ?それで、そういう案を出してしまったんだけど。」

 

「うん…。お腹もいっぱいだし、お酒も飲んだし、今日べつにカラオケって感じでもないし…。旅行の約束もしたし。分からなくないんだけど…。」

 

男性の、こういった誘いに慣れているような印象はなかったが、彼女特有の根幹から正直な性格がそうさせたのか、ぼくの誘い対して特に軽蔑する様子もなく(言葉では罵倒していたが)この後のことを思案していた。 

 

「いや、俺も今日誘うのはどうかなぁって思ったんだけど、逆に誘わない理由が見当たらなかったわ。」

 

「誘わない理由、もうちょっと頑張って探してよ!まだちゃんと会って2回じゃん!私だって同棲してるって言ったじゃん!」

 

「それは別に誘わない理由にならなかったんだよね。じゃあ逆に、断る理由を教えてよ。」

 

「まだ会って2回目!お互いのことちゃんと知らない!」

 

「他には?」

 

「他?もっとあるよ!私、簡単に寝ないし。」

 

「分かった。一回外に出よう。」

 

「うん。それには賛成。そうしよう。」

 

ぼくらはお会計を済ませて、外にでた。

店を出て少し歩くと彼女は、

「で、どうするの?」と言った。

身長のあまり高くない彼女のノースリーブから伸びる両腕は、なんとなく夜の新宿には映えていて、酔っ払った30代くらいの人が行き交う中で、彼女はどうしても決めかねるような表情をしていた。

 

「どうするの?って、こっちだよ。」ぼくも酔っ払っていたが、歩く方向だけを指差して言った。

 

先を歩くぼくを少し追いかけ、彼女は軽くぼくの手を掴んで止めて

 

「ホントに行くの?」

 

「いや、嫌なら行かないよ。もちろん。でもさ、、」
と、なぜかこのタイミングでぼくらは人の往来する中でキスをした。

 

「君、こういうとこでするの平気なの?というか、いつもこういう事してるでしょ?」彼女は疑うような顔でそう言い、ぼくの事を掴んでいた手を離した。

 

「いや、ホントにしてないから。」

 

「分かった。じゃあ、行こう。でも、私に触んないでね。」

 

そう言って、結局ぼくらはそちらの方へ歩いた。

 

途中彼女が、ふと我に返って
「ひとつだけ言って良い?」と前置きを言い

 

「全然ドキドキしないんだけど。」と告げた。

 

この時ぼくは、茫然とするような不安が胸いっぱいに広がった。
女性に、ここまで言わしめてしまった…と、全身から酒が引くように感じた。

 

すると次の瞬間、
彼女は、右腕を大きく伸ばして、小さな手でぼくの首に手を回し、力強く引き寄せた。彼女の顔に、ぼくの顔が近づく刹那ぼくは「(あっ、これめっちゃ大胆なキスだ…)」と思った。

しかし、顔が近づき唇が触れ合う間際、彼女は背伸びをした。身長が低いゆえの解決方法だったのかもしれない。

唇が勢いよく触れ…というよりぶつかる。

そんな半暴力的ともいえるキスをしたあとに彼女が、

「ちょっとドキドキしてきた。」

そう言って、彼女がぼくの手を引いてホテルへと進んだ。

 

ホテルに入る瞬間彼女は、両手を合わせて

「知り合いに会いせんようにー!」と祈りながら、いたずらっぽい顔でぼくの顔を見た。

「見つかってしまえ。全員知り合いであってしまえ。」

 

ホテルに入り、フロントで話をすると、受付の男性は申し訳なさそうに

 

「申し訳御座いません。本日、満室でございます。」

 

と言った。

 

 

時刻は午前0時を回っていた。

 

ぼくと彼女は仕方なくそのホテルから出た。

 

ぼくは焦った。顔にも出ていたかもしれない。そして、それを裏付けるように、彼女はぼくの顔を見て「焦りが、顔からこぼれてるよ。」と言い、更に

 

 

「私のドキドキは、あと3分しか保ちません。」と、にやにやしながら言った。

 

 

やはり彼女のこの「業(ごう)」とでも言うべき人間らしさに、ぼくはこの時大きく惹かれた。